日本人ポスドクが応募可能なフェローシップ・研究助成の網羅的リスト

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こんにちはmasayaです。

ポスドクになると取っておきたいのが『フェローシップ・研究助成』ではないでしょうか?

フェローシップ・研究助成が獲得できると、ボスの研究費を節約で来たりCV (経歴)に書けたりと色々とメリットがあります。

フェローシップには国籍、滞在国、PhD取得年数など応募条件の違うものがいろいろありますが、調べられた範囲内で『日本人のポスドクが応募できるフェローシップ・研究助成』についてまとめました。

1. フェローシップ・研究助成を取ることの4つのメリット

研究者としてのキャリア初期でフェローシップを取得することは、とてもメリットがあります。

1-1. CV(業績)に追加できる

フェローシップを獲得するメリットの一つが、CV(研究業績)に追加できる』が挙げられます。

キャリアの浅いポスドクなどの研究者にとっては外部資金獲得の良例として業績欄に書けるのは大きなメリットです。

1-2. 金銭的メリット

フェローシップが獲得できると、2-3年単位で金銭的なサポートを受けられるのはありがたいです。

フェローシップによっては給料のサポート以外にも、

  • 研究費
  • 子供の養育費
  • 引っ越し代
  • 有給の育児休暇

など色々なサポートもつくものもあるので、以下で紹介するフェローシップではそのあたりも触れていきます。

1-3. ボスの予算(グラント)の節約になる

所属研究室によってはボスの研究資金(グラント)が厳しいところもあるので、ボスの研究資金に依存しない資金をとってこられるのは『ボスの研究予算の節約』につながるので通常は歓迎されるはずです。

フェローシップが獲得できると自身の金銭的サポートが得られ、ボスの予算の節約も出来て、どちらにとってもwin-winな状況になります。

1-4. 海外留学の足がかりになる

フェローシップの獲得は、海外へに研究留学への足がかりになる場合もあります。留学先によっては、フェローシップなどの外部資金を獲得してこないと受け入れてもらえない研究室もあるので、フェローシップ獲得の成否は時に重要なターニングポイントになります。

日本に滞在している間に獲得出来るフェローシップの中では、日本学術振興会の海外特別研究員(通称: 海外学振)がもっとも馴染みがあり知名度も高いです。

 

2. 長期サポートのフェローシップ・研究助成

2-1. 海外ポスドクのためのフェローシップ

① 日本学術振興会 海外特別研究員

応募要件: 日本国籍保有者、PhD取得後5年未満

助成期間: 2年

給料: 滞在費として450620万円 (地域による)

その他サポート: 往復国際航空券

Link: 海外特別研究員

特記事項: 採択率は20%前後。申請書は日本語で作成。幅広い領域をカバー。

 

② 日本学術振興会 海外特別研究員-RRA (Restart Research Abroad)

応募要件: 日本国籍保有者、PhD取得後10年未満、90日以上の研究中断期間有り、大学などの研究機関での常勤職歴が5年未満

助成期間: 2年

給料: 滞在費として450620万円 (地域による)

その他サポート: 往復国際航空券(子供分も含む)、子供手当(滞在費の10%相当: 約45〜62)

Link: 海外特別研究員

特記事項: 5名ほど採用だが、採択率はその年の応募者数により20〜50%と大きく変わる。申請書は日本語で作成。幅広い領域をカバー。

 

③ The Helen Hay Whitney Foundation Research Fellowship

応募要件: PhD取得後1年未満、アメリカの研究室で働くこと

助成期間: 3年間

給料: 1年目$54000、2年目$57000、3年目$60000

その他サポート: 年$1500の研究費

Link: The Helen Hay Whitney Foundation Research Fellowship

特記事項: 推薦状3通が必要

 

④ Human Frontier Science Program Long-term Fellowship

応募要件: PhD取得後3年未満、研究分野の変更

助成期間: 3年

給料: 1年目$46800、2年目$48720、3年目$50700

その他サポート: 研究費$4920、子供の教育費$4680/年、引っ越し代$2000-4000、3ヶ月の有給の育児休暇

Link: Human Frontier Science Program Long-term Fellowship

特記事項: 採択率は10-15%前後。国際的知名度が抜群なのでフェローシップ終了後のキャリアへの影響も大きい。HFSP受賞者ミーティングでネットワークが広がる。

HFSPフェローシップへの応募・獲得に関しては、“HFSPフェローシップ獲得のコツがとても参考になるので是非読んでみて下さい。

 

⑤ Life Science Research Foundation postdoctoral fellowship

応募要件: PhD取得後5年未満

助成期間: 3年間

給料: $52000/年

その他のサポート: 研究費$10000/年、子供の教育費$3000/年

Link: Life Science Research Foundation postdoctoral fellowship

特記事項: 採択率は2%前後と狭き門

 

⑥ American Heart Association Postdoctoral fellowship

応募要件: PhD取得後5年未満、F1, J1, H1b, O1ビザ保有が条件。

助成期間: 2年間

給料: $47500-$57600

その他のサポート: 健康保険費用として$1000、研究費$3000

Link: “American Heart Association Postdoctoral fellowship”

特記事項: 2017年の実績では、232/731件が採択  (採択率は32%)

 

⑦ Beckman Institute Postdoctoral Fellowship

応募要件: PhD取得後3年未満、J1ビザ取得可能

助成期間: 3年間

給料: $54000

その他のサポート: 健康保険カバー、3年間で研究費$25000 (最大$2000まで引っ越し費用にも使用可)

Link: Beckman Institute Postdoctoral Fellowship

特記事項: 〜20人ほど採択

 

⑧ Jane Coffin Childs Fellowship

応募要件: PhD取得後1年以内、アメリカで研究予定

助成期間: 3年間

給料: 1年目$52000、2年目$52500、3年目$53000

その他のサポート: 子供の教育費$1000/人。研究費$2000/年。学会などへの交通費$1800/年。

LINK: “Jane Coffin Childs Fellowship”

特記事項: 採択件数は20〜30件。

 

⑨ EMBO Long-Term Fellowship

応募要件: PhD取得後2年未満、First author論文1報、EURO圏の国へ移動すること

助成期間: 2年

給料: 国毎に異なるが$49000程度

その他のサポート: 6歳以下の子供の教育費€25000、トラベル費用€5000、3ヶ月の有給育児休暇

Link: EMBO Long-term Fellowship

特記事項: 採択率は〜15%

 

⑩ Marie Skłodowska-Curie Individual fellowship

応募要件: EUメンバー国で働くこと、PhD保有

助成期間: 2年

給料: €56000相当、ただしホスト国により傾斜 (各国ポスドクサラリー平均の25%以上の水準)

Link: European Comission Individual Fellowships

特記事項: 採択率は13-19%

 

11. 第一三共生命科学研究振興財団 海外留学奨学研究助成

応募要件: PhD取得者35以下(医学部卒業者は37以下)1年以上の研究留学予定

助成期間: 2年間

給料: 2年間600万円(50/2ヶ月 x 12)

Link: 第一三共生命科学研究振興財団 海外留学奨学研究助成

特記事項: 採択件数は5件。

 

2-2. 日本国内ポスドク用フェローシップ

① 日本学術振興会 特別研究員 (PD)

応募要件: 日本国籍保有者、PhD取得後5年未満、所属研究機関から別の研究機関への移動が必要

助成期間: 3年

給料: 研究奨励金として約435万円 (364,000/)

その他サポート: 研究費150万円以内

Link: 特別研究員-PD

特記事項: 採択率は15%前後。幅広い領域をカバー。日本学術振興会との雇用関係がないため、国民健康保険と年金は自分で手続きが必要。

 

② 理研 基礎科学特別研究員制度

応募要件: PhD取得後6年以内(取得見込みもOK)、理研の希望研究室の受け入れ許可が必要。

期間: 1年契約だが、所定の評価を得れば最大3年まで延長可能。

給料: 487,000円/月(約585万円/年)

その他のサポート: 通勤手当〜5.5万円/月。住宅手当(一部)。赴任時の旅費(一部)。研究費100万円/年。

LINK: “理研 基礎科学特別研究員制度

特記事項: 採択数は60件程度。採択率は約5〜10%。日本学生支援機構奨学金(2003年度までに大学院第一種奨学生に採用されている場合)の返還特別免除の対象職。海外からの受験者への旅費支給有り。

理研基礎科学特別研究員は国内でポスドクを行うには最高水準の待遇だと思うので、領域がマッチしていれば是非応募してみると良いです。

 

3. 短期のフェローシップ・研究助成

① 公益財団法人上原記念生命科学財団リサーチフェローシップ

応募要件: 37歳以下(医学部卒業者は39歳以下)、年収600万以下

助成期間: 1年間

給料: 350万〜450万円

Link: 上原記念生命科学財団研究助成

特記事項: 採択件数は90件。250万以下の他の研究助成と併用可能。

 

② 公益財団法人上原記念生命科学財団ポストドクラルフェローシップ

応募要件: 33歳以下(医学部卒業者は35歳以下)、年収600万以下

助成期間: 1年間

給料: 350万〜450万円

Link: 上原記念生命科学財団研究助成

特記事項: 採択件数は50件。250万以下の他の研究助成と併用可能。

 

③ 内藤記念科学振興財団 海外研究留学助成金

応募要件: PhD取得後7年以内、40歳未満1年以上の留学予定者(既に渡航している人は応募不可)

助成期間: 1回の助成(送金)

助成額: 450万円/1

Link: 内藤記念科学振興財団 海外研究留学助成金

特記事項: 採択件数は10程度応募数によるが採択率は1025%。他のフェローシップ・研究助成(200万以上)の重複は不可。しかし受け入れ先研究機関からの給料や研究費は重々対象外。

 

④ アステラス病態代謝研究会 海外留学補助金

応募要件: PhD取得者(年齢制限なし)1年以上の留学予定者

助成期間: 1回の助成

助成金額: 200400万円

LINK: アステラス病態代謝研究会 海外留学補助金

特記事項: 採択件数は11件。2017年度は267の応募11件採択(採択率は4%)。募集領域は生命科学全般

 

⑤ 東洋紡バイオテクノロジー 長期研究助成

応募要件: PhD取得、39以下、初めての海外留学

助成期間: 1年間(選抜者は2年間のサポートを受けられる)

助成額: 最大450万円(他のフェローシップの重複取得不可)

LINK: 東洋紡バイオテクノロジー 長期研究助成

特記事項: 採択件数は5件前後。

 

4. 研究機関独自のフェローシップ・研究助成

ポスドクで在籍する研究機関でも、『研究機関独自のフェローシップ』を設けている場合があるので、ぜひ所属研究機関へ問い合わせてみて下さい。

以前所属していた研究機関の内部フェローシップはNIH給料基準より20%程度高く、助成期間も3年間と長くとてもサポート内容が充実していたので、問い合わせの価値はあります。

 

5. フェローシップのリストへのリンク

以下の3つのサイトは、ポスドクで応募できるフェローシップにリストが良くまとめられているのでとても参考になります。

1) “Funding Opportunities for Postdoctoral Scholars”

2) “Funding Scheme for Postdoctoral Fellowships”

3) 研究者向けの奨学金制度

 

Writing application

まとめ

  • フェローシップ・研究助成はキャリアの若い研究者にとってはメリットしかないので、ぜひ獲得を目指す
  • PhD取得後の年数、年齢、現在の滞在場所(日本or海外)など個々人の状況によって応募出来るフェローシップ・研究助成は異なる
  • 出来れば長期サポートのフェローシップの獲得を優先的に目指すと、メンタル的に楽になるのでより研究活動に専念できる
  • 総合的にみて、日本学術振興会の海外特別研究員(海外学振)は応募する価値の高いフェローシップ

今回紹介したフェローシップ・研究助成は数多くあるフェローシップの中から日本人で応募できるモノ(ライフサイエンス系を中心に)を選んでまとめています。

これら以外にも自分の条件に合ったフェローシップもあると思うので、受け入れ先のボスなどと相談してどのフェローシップを狙っていくか決めていくのが良いと思います。

フェローシップの申請書の書き方については、“海外学振の採択率を少しだけ上げる申請書の戦略的な書き方”が参考になるので合わせて読んでみて下さい。

もちろんフェローシップが獲得できるのが理想ですが応募することにもメリットは十分あるので、その辺りは“大学院生・ポスドクに学振・フェローシップへ応募して欲しい3つの理由”を合わせて読んでみて下さい。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

参考になった、面白かったと思って頂けたら是非シェアして下さい:)

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