Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunity

製薬企業の研究所面接で好印象を残すためのプレゼンテーション

こんにちは、masayaです。

製薬企業の研究職の選考過程で避けて通れない重要な選考過程の一つは、製薬企業の研究所で行う研究所面接です。その中でも候補者の印象を大きく決定づけるステップが『研究プレゼン(Job Talk)だと考えられます。

できることならこの研究プレゼンで好印象を残したいと思うはずです。

実際に、自分自身の就職活動で行なったプレゼンテーションではポスドク時代のボスからたくさんのダメ出しをいただいたおかげで、幸いにも好評だったと後日教えていただきました。また、現職でも色々な候補者の研究プレゼンを見てきて、好印象だったかどうかというのも分かるようになってきたつもりです。

そんな自身の研究プレゼンの経験とこれまでに見てきた色々な候補者の研究プレゼンの経験を基に他の候補者よりも少しだけ『好印象を残すためのプレゼンテーション』の作り方で気をつける点3つについてまとめました。

1. ストーリー+Problem-Solve型のプレゼンスタイルを心がける

製薬企業の研究所での研究プレゼンテーションではそこそこ長い発表時間をもらえるはずです。20、30、45分といったところだと思います。

これくらいまとまった発表時間が与えらてもらえたら、ある程度まとまった量のスライドが使えるので、スライド構成や内容に力を入れて取り組めば取り組むほど、プレゼンテーションを仕上げていくことが可能です。

ではどういったスタイルが好まれるのか?

プレゼンテーションのスタイルは大きく分けて以下の2つに分類出来ると思います。

以下、2つのプレゼンテーションの冒頭で使用するスライドをもとに、ストーリー型プレゼンテーションコレクション型プレゼンテーションについて簡単に例示しています。

1-1. ストーリー型プレゼンテーション

ストーリー型のスライド例

まず、ストーリー型のプレゼンテーションで意識しておきたい大切なことは、1つのテーマについて『何が問題だったのか?』から『どういった結論にたどり着いたのか?』までを論理的かつ順序立てて示していくことです。

1つのテーマに対する問題提起の部分が大きければ、その問題を2−3個程度の小さな問題提起に細分化していく方法も有効です。1点だけ注意しておくことは、細分化した問題提起も話の本流からズレさせないことです。

ストーリー型のプレゼンテーションで最も大切にすべきスライドは、プレゼンテーション冒頭での『問題提起のスライド』だと考えています。ここでしっかりと『私はXXの研究分野におけるYYといった問題を解決するために研究に取り組んできました』と明示することで、聴いている側へこの後にプレゼンテーションの内容がどういった方向へ進んでいくのかをリードしていくことが出来ます。聴衆の興味を引く、面白そうだなと感じてもらえる問題提起のスライドが示せるかどうかは、とても大切にしてほしいポイントです。

ここでしっかりと発表者のプレゼンテーション(研究)が何に向かっていくのかが聴いている側に伝えられないと、せっかく良いデータを発表していても聴衆の人たちは途中で『で、これは何(目的)のためのデータなんだっけ?』と分からなくなることがあります。

そうなると、せっかくのプレゼンテーションの機会なのにインタビューを受ける側・する側の双方にっとってもったいない結果になりかねないので、『問題提起→結論の流れ』はスライドを作っている時も常に意識しておくと良いと思います。

1-2. コレクション型のプレゼンテーション

 

コレクション型のスライド例

対して、コレクション型のスライドでは『これから発表する研究テーマ4つについて話していくよ』とまず冒頭で説明してプレゼンテーションを始めていくことが多いと感じます。このスタイルのプレゼンテーションの場合は、上の図のように各研究テーマの間に『短いSummary』を挟んで行くことが多いです。

その後次の研究テーマの発表へと移っていくわけですが、研究テーマ①と研究テーマ②の関連が薄い場合は、新たに研究背景のスライドを入れて説明していくことになるので、聴き手側としては一度頭の中をリセットして新しい情報を入れていかなくてはいけないので、人によっては大変かもしれません。(個人的にはすぐ忘れてしまいます)

また、3つも4つの研究テーマがあるとそれら1つずつに対して研究背景を説明するための時間も割かなくてはいけないので時間がもったいないと感じます。複数の研究背景のスライドに時間を使うくらいなら、1つ(多くても2つ)の研究テーマに絞って『問題→アプローチ→結果→考察→結論』の論理的な流れを重視した方が、聴き手側へ問題解決能力をアピールできると思います。

最後に、複数の研究テーマについて話していくとストーリー型のプレゼンテーションのように1つの結論へまとめていくのが割と難しいと思います。複数のテーマがいい感じ繋がっていれば、1つの結論へ持っていくことも可能でしょう。

極端な例として、修士の研究テーマから1つ、博士の研究テーマから1つ、ポスドクの研究テーマから1つ選び『自分のこれまでの研究人生の集大成』をまとめて話そうと思ったらまとまりが悪いでしょうし、好印象を残せるかどうか疑わしいです。

プレゼンテーションに自信があれば、コレクション型のプレゼンテーションもこなす事が出来るのでしょうが、あまり自信がなかったり経験が浅いと感じているならば、ストーリー型のプレゼンテーションのスタイルを選択する方がベターと言えると思います。

1-3. ストーリー型プレゼンテーションの実践例

以下の2枚のスライドは自分の研究所プレゼン(Job Talk)の時に使用した問題提起部分のスライドとプレゼンの最後に出した結論(まとめ)のスライドになります。粗例で失礼しますが、ポスドク時代のボスの指導やコメントでこってり絞られたスライドなので参考になると幸いです。

問題提起のスライド

まずできる限り文字を減らすことを意識していたので、スライド上半分で説明していた研究背景の部分は自分でパワーポイントやイラストレイターで作成した模式的な図を使うことで、文字ではなく図を聴き手側に追ってもらえるように工夫しています。あとは、矢印も上手く使って自分のスピーチの流れをサポートしていました。

そしてスライド下半分で、前半の研究背景でのオープンクエスチョン(Question)をまとめつつ、それに対してどうアプローチ(Approach)していったかということについてまとめています。ここで一番大事だと感じることは、問題提起の部分では『?、クエスチョンマーク』を使用して明確にこの問題に対して研究を進めた、という事を示すことだと思います。

この問題部分を明確に示すことで、後々聴いている側が途中で『で、これは何(目的)のためのデータなんだっけ?』と分からなくなることをある程度は防いでくれると思います。

結論のスライド

結論部分に使うスライドでもできる限り文字数を減らすことを意識していました。スライド内で文字を図で置き換えられる部分に関しては、図やプレゼンテーションで使用したデータを再掲載することで良いインパクトを残しつつプレゼンテーションを締めくくれます。

個人的に好んでいるスタイルになりますが、プレゼンテーションの冒頭で示した問題提起(Question)を最後のまとめのスライドに再掲載し、このプレゼンテーションで取り組んだ問題について今一度聴き手側にリマインドすることで、最後の結論部分のスライドで『問題アプローチ(データ)→結論』を簡潔に締めくくれます。今の所、このスタイルのプレゼンテーションは現職でのマネージャーにも好評なので、是非試してみて下さい。

プレゼンテーションのストーリーの作り方に慣れていない方は、4ステップで作る良質なプレゼンテーションのストーリーの作り方をあわせて読んでみてください。

 

2. 分野外の研究分野の聞き手が多いことを想定してシンプルで視覚的なスライドを作る

製薬企業の研究所面接のプレゼンテーションの場には多様なバックグラウンドを持った研究者が参加しているはずです。私の研究プレゼンテーションの場には、Molecular Biology, Structural Biology, Biophysics, Enzymologyなどのバックグラウンドを持った研究者がいました。

研究所でのプレゼンテーションも大きな学会での口頭発表のように色々なバックグラウンドを持った研究者がいることを想定して、

  1. 専門的すぎる用語を少し易しい用語に置き換える
  2. 実験の概要の絵を入れる
  3. データのラベルをクリアにする
  4. 文字を入れ過ぎない
  5. 早口にならない

の5点を意識してスライドを作り練習していくと、本番のプレゼンテーションでの相手側のプレゼン内容への理解がかなりの確率で深まります。

スライドの作り方に関しては、プレゼンテーションのスライドを視覚的に作り変えるための5つのポイントでも詳細にまとめてあるので、是非参考にして下さい。

 

3. 70%の出来で人前で練習をして質問対策も行う

では、概ねスライドが出来たらどうするか?

本番までにプレゼンテーションをきっちり仕上げるための練習方法でも触れていますが、70%くらいの仕上がりに入った時点で、ラボメイトや指導教員に声をかけて練習会を行うことをお勧めします。なぜなら、自分以外の視点からのフィードバックはストーリーを洗練させるため、スライドをよりシンプルに分かりやすく仕上げていくために貴重だからです。

一番避けて欲しいのが、『自分の中での100%の出来』に達してから、同僚・指導教員にスライドチェックや発表練習に付き合ってもらうことです。なぜなら、よっぽどのプレゼンテーションの熟練者でもない限り『自分の中での100%≠本当の100%』だからです。

ポスドク時代のプレゼンが上手かったボスですら、大きな学会での発表前にはラボメンバーを集めて練習会をしていたくらいなので、人前での練習の大切さを改めて実感しました。

人前での練習の良い点は、ラボメンバーやボスから色々な観点からの質問をしてもらえる点です。ここで受けた質問は、実際の研究所での本場のプレゼンテーションで受ける可能性が十分にあるので、メモを取り後で質問対策に活用することをお勧めします。

プレゼンテーションには、応募要件に必要なスキルを入れていくと思いますが、注意してほしい点は、必要以上にスキルを有していることアピールし過ぎて肝心のプレゼンテーションの流れやストーリーが悪くしないことです。

 あとは自分に自信が持てるくらいまで練習をすれば大丈夫です。

まとめ

最も重要なことは、高いProblem-Solve (問題解決)の能力を有していること』をアピールすることだと思っているので、この点が明瞭な研究プレゼンはかなり好印象残すことができていると感じます。この点は日米の研究職のプレゼンテーションで共通なのではないかと思います。

練習で出来ないパフォーマンスは本番でも出来ないので、最後は練習がモノを言うので練習をきっちり行ってぜひ仕上げて下さい。

効率的な練習方法に関しては本番までにプレゼンテーションをきっちりと仕上げるための練習方法が参考になるので、あわせて読んでみて下さい。

また、ポスドク時代のボスから学んだプレゼンテーション全般に関するポイントは英語が苦手だからこそ上達させたいプレゼンテーションの構成とポイントでまとめてあるので、是非参考にしてみて下さい。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

参考になった、面白かったと思っていただけたら是非シェアして下さい 🙂

TOPページへ戻る