Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunity

ポスドクのトレーニングを通じて向上が期待されるスキルやメリット

こんにちは、masayaです。

博士課程修了後に就職して企業へ行くのか?それともポスドクとしてさらなる研究経験を積むのか?は非常に悩ましい問題だと思います。

日本ではポスドクというキャリアパスに対してややネガティブな印象を持っている方がいるかもしれませんが、海外ではポスドクというキャリアパスはアカデミアのポジションや企業の研究職を得るために重要なトレーニング期間として考えられています。

今回は日本と米国でポスドクをした経験を振り返ってみて『ポスドクを経験して伸びたかなと感じる、向上が期待されるスキル』についてまとめました。

1. 問題解決能力の向上

ポスドク期間中はティーチングの義務やその他の雑務は通常はなく、研究室主宰者(Principal Investigator: PI)の研究計画に準じたプロジェクトに100%従事することになります。

こうやって腰を据えて1つのサイエンスのプロジェクトにじっくりと向かい合う時間はとても貴重です。

プロジェクトの課題(=サイエンスの問題)を解決するために、プランA, B, C…など多くの選択肢を試行錯誤していくことになります。

こうやって毎日プロジェクトの問題を解決するために、短期的なプランや長期的なプランを考えて実行していくことで『問題解決能力』がトレーニングされていきます。

博士課程でも同様に考えて試行錯誤して、プロジェクトを進めていくと思いますが、ポスドクでは博士課程在籍時の研究室とは異なる研究室でプロジェクトを進めていくことが多いので、異なるPI・環境下で新しいアプローチや手法を学ぶことも良い経験になると思います。

こうやって博士課程時に身についた問題解決能力の土台の上に、新たなポスドク環境下でまたじっくりと色々と考えたり試したりする経験を通じて、

が上がっていくはずです。

博士課程で3-5年+ポスドクで1-5年程度サイエンスに取り組んで身につくはずの『問題解決能力』は研究職・非研究職のどちらの仕事でも役にたつと考えられます。実際に現在ポスドクを経て、企業の研究職として働いていますが、ポスドク時代のトレーニングの経験値や習慣は非常に役に立っていると実感できています。

博士と修士、どちらの方が就職に有利なのか?〜日本と海外のギャップでも触れていますが、こういった理由で海外ではPhD保持者の仕事の選択肢が多いのではないかと感じます。

 

2. 研究のプロフェッショナルとしての自信が少し持てる

まったく個人的な感想なんですが、学部で1年+修士課程で2年+博士課程で3年の述べ6年ほどの研究経験を積んだわけですが、博士課程修了時の段階で『今後プロフェッショナルな研究者としてやっていけるのか?』と考えた時に、あまりにも自信がありませんでした。

博士課程の研究室では良くも悪くも慣れの部分があり快適感じるようになっていたので、もう少し自分にとって快適ではない環境+分野の先端のレベルの高い研究室でトレーニングを積めば少しはプロフェッショナルな研究者として今後やっていく自信がつく、かもしれないと思い米国の研究室を選択しました。

約5年のポスドクとしてのトレーニングを積みましたが、博士課程修了直後よりは少しだけ研究者としてやっていくことが出来る…かもしれないくらいの気持ちにはなれました。

また、米国でのポスドクは立派なトレーニング期間としての地位を得ていることが体感でき、日本にいた時に周囲から無意識に刷り込まれた『ポスドク』という職に対するややネガティブな印象がガラリと変わったことは大きな収穫だったと思います。

研究室選びに関して興味がある方は、“ポスドク、大学院の研究留学で後悔しないための研究室の選び方”をあわせて読んでみて下さい。

 

3. プロフェッショナルネットワークが拡がる

ポスドク期間中のプロジェクトは博士課程中のプロジェクトよりも一層自分で進行(ドライブ)させていくことになることが多いと思います。

プロジェクトの中に占める役割と責任も大きくなるので、自然とプロジェクトの成果を学会や所属機関で発表する機会も増えてきます。

発表の機会が増えるということはvisibility』(認知度のようなイメージ)が上がることに繋がり、発表に興味を持って話しかけてくれる人、質問してきてくれる人、共同研究を持ちかけてくれる人などアカデミア・企業双方のネットワークの拡がりに繋がっていきます。

またひと昔に比べるとより難しいテーマへチャレンジするために国際共同研究をする機会も今後増えていくことかと思います。共同研究もネットワークを拡げていく上では大切です。

またポスドクの研究室でビッグラボを選ぶ5つのメリット・3つのデメリットでも紹介していますが、大きな研究室になると多くの優秀なポスドクの同僚が集まってくるので、所属する研究室のボスとの縦のネットワークだけでなく、将来アカデミアや企業で活躍する可能性が高い同僚達との横のネットワークも拡げることが出来るのは大きなメリットだと思います。

ネットワークの拡げ方については、コネ就職するために活用すべきネットワークの知識と作り方ポスドク・博士課程学生が海外の学会へ参加する4つのメリットなどでまとめてあるので参考にしてみて下さい。

 

4. サイエンスにおけるコミュニケーション力が向上する

博士課程+ポスドクとしっかりとトレーニングを行うことで、共同研究や学会での発表・質疑応答などで他の研究者とコミュニケーションを機会が増えていきます。対外的な発表の機会が増えるということは、プレゼンテーションの機会が増えるので、自然とプレゼンテーションの重要性に気がついていくと思います。

英語が苦手だからこそ上達させたいプレゼンテーションの構成とポイントで詳しくはまとめていますが、自分の進捗や成果を聞き手に興味を持って聞いてもらう、伝えることはとても大切なことです。特に母国語ではない英語で伝えなければいけない時は、視覚的に伝えることが出来るプレゼンテーションは大きな助けになるので、少しだけ意識的に取り組んでみてください。

またサイエンスのコミュニケーションには、ライティングによる伝える力も含まれると感じます。アカデミアに進むなら、グラント(科研費)を書かなければいけませんし、企業に行ってもレポートや申請書、起案に関する書類などサイエンティフィックなライティングは避けて通れません。

ポスドクをすることで多くの人のこのサイエンティフィックなライティングを『フェローシップの申請書の作成』でまず初めに経験することになるのではないかと考えられます。

ここフェローシップの申請書の作成の過程を通じて、

ことを通じてライティングのスキルは確実に少しアップすると思います。

ここで身につくサイエンスにおけるコミュニケーション力 (プレゼンテーション+ライティング)は、ポスドクのトレーニングを終えてアカデミアの職に就こうが企業の職に就こうがどこででも役に立つはずと思います。

 

5. 研究マネージメントについて考えるきっかけになる

ポスドクのトレーニングを終えた後はアカデミア・企業で研究職の道を選択する場合が多いと思いますが、アカデミアで独立して研究室を運営する場合でも、企業でプロジェクトチームを引っ張ってプロジェクトを進めていく場合でも、効率的にプロジェクトを進めるための『研究マネージメント』は非常に大切になってくると思います。

そういった一歩先のキャリアを見据えながらPIのボスの研究室運営やプロジェクトの進め方、グラント申請やフポスドク・学生への指導などをみると博士課程で過ごす研究室生活とは違ったものを得ることが出来るかもしれません。

また、米国でポスドク生活を経験した影響でしょうが、特に米国では効率的に業務をこなして仕事後の家族と時間を大切にする文化もあるので、効率的に仕事をこなすためのスキルは身につけて損はありません。米国でのポスドク期間中は博士課程の時よりもどうすれば効率的に仕事をこなしていけるかについて考える良いきっかけになりました。ポスドク時代に身につけた作業効率向上のための習慣について興味があれば、是非米国の速い環境に適応するために学んだ作業効率を向上させる9+αの習慣を参考にしてみてください。

 

まとめ

ポスドクというキャリアパスはアカデミア・企業の研究職をはじめとした職種へ就くための重要なトレーニング期間です。ポスドク後に全員が研究職へ進むことはありませんが、ポスドク期間中にトレーニングされる問題解決能力やプレゼンテーション・ライティングのスキルは、いろいろな職種に応用が効くスキルだと思うので、もう少しポスドク経験者の中途採用などが流動的・活発になっていくと面白いなぁと感じます。

博士取得者の進路の多様性については、ポスドク後・博士課程修了後の問題解決能力を活かす進路の多様性でいろいろとまとめてあるので、参考にしてみて下さい。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

参考になった、面白かったと思って頂けたら是非シェアして下さい 🙂

TOPページへ戻る