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博士と修士、どちらの方が就職に有利なのか?〜日本と海外のギャップ

こんにちは、masayaです。

『修士で就職しようか?』もしくは『博士へ進学するか?』は人によって答えが異なる難しい問題ではないでしょうか?

先日読んだなぜ博士より修士を好む傾向が企業にあるのか?【修士卒が社会を経験して感じたこと】という日本の企業の就職状況が分かりやすく考察された記事がとても面白かったので、

では『海外(特に米国)ではどうなのか?』について、米国で数年間のポスドクを経て現地で就職活動経て現在アメリカの製薬企業で研究職をしている視点からちょっとだけ考えてみたいと思います。

1. 製薬企業における博士の需要は高い

現在アメリカの製薬企業の研究所で働いて感じるのは周りにPhD(博士)を持った人が大勢いるということです。感覚的に7割程度がPhD(博士)の研究者、3割程度がnonPhD(修士or学士)だと思います。

では、実際に現在(2019年6月中旬)出ている博士が応募への必要要件の求人情報の数と修士でも応募できる仕事ってどれくらいなんだろう?と思ったので、BioSpaceという製薬企業の求人情報を中心に取り扱うジョブサイトで調べてみました。

まず、博士が必要な求人情報の数は下の図のように874ヒットしました。特に専門領域でフィルターをかけていないので、この数には研究職、開発職など色々な仕事が含まれています。

BioSpaceで『PhD』が必要な求人の検索結果

次に、修士が必要要件の求人情報を同様に検索した結果は下の図のように287でした。この数字も博士で検索した時と同様に、専門領域などでフィルターをかけていない数になります。先ほどの博士に対する仕事の数が874件だったので、修士を対象とした仕事の数はおよそ1/3程度ということになります。

BioSpaceで『MS』が必要な求人の検索結果

アメリカの採用は通年採用であることを考えると、時期による多少の変動はあるでしょうが『博士の仕事の数>修士の仕事の数』の傾向はあるのではないかと考えられます。

 

2. 博士取得者の方が世界的にチャンス多い

次に世界中の求人を扱うNature Careersでは博士が応募への必要要件の求人の数と修士で応募できる仕事の数はどれくらい違うのだろうかと調べてみました。

Nature Careersでの学位レベル別の求人情報の数

 結果は上記のように、PhD(博士)がQualification (要件)の仕事の数は1254、修士が要件の仕事の数は145で、博士を対象にした仕事の数は修士が要件の仕事の数のおよそ9でした。これも時期による上下動はあるでしょうが、9倍も差があれば『博士の仕事の数>修士の仕事の数』の傾向はかなりクリアに現れているんじゃないかと感じました。

Nature Careersは世界中のアカデミア・インダストリーの両方の求人情報を扱っているので、『博士の仕事の数>修士の仕事の数』の傾向は世界的にみてもあるような気がします。

 

3. そもそもミスマッチの確率が低い

日本でも修士と博士で就職活動をした経験はありますが、日本の就活の時に募集要項的を見て、

と言った部分が全く分かりませんでした。(企業研究やOB訪問などが不十分が原因でしたら失礼します…)

日本での博士の就職活動ではよく「企業側とのミスマッチだ」などということも聞いたことがありますが、アメリカで就職活動していた時は、日本での募集要項に相当するJob Descriptionには明確に上述の要素(専門性、職務経験の必要性、出張の有無など)は明記されているので、自分の専門性と少なくとも50%以上マッチしている仕事には確実に応募することが出来ていました。

ですので、よっぽどアグレッシブな解釈をして応募する場合を除いて『ミスマッチは起こらない』と考えられます。ミスマッチが起こりづらいという事は、応募者側と採用側双方にとって時間と労力の節約になるのでお互いにWin-Winな状況になります。

 

4. 博士取得のメリット

4-1. 仕事の選択肢が多い

博士を取得するメリットはいろいろあると思いますが、1つは上述の通り『アカデミア・企業で応募できる仕事が修士よりも多い』という点が挙げられると思います。

仕事も多いのはもちろんですが、大企業をはじめ小さなスタートアップ企業も多くあるので、博士取得者の就労の選択肢は広いと思います。

4-2. 生涯年収が優れている

もう1つは『博士を持っている方が収入面のメリットが大きい』という点だと考えられます。

『Higher education, higher salary』という言葉も時に耳にしたことがありますし、また“US News Education: How Higher Education Affects Lifetime Salary”内の“The College Payoff by Georgetowon University Center for Education and the Workforce”によるレポートによると、学士、修士、博士、プロフェッショナル(医師や弁護士等)別の生涯年収の平均について下のように述べられていました。

図:学位レベル別生涯年収 (By The College Payoff by Georgetowon University Center for Education and the Workforce)

修士と博士の生涯年収差が約$0.6 million (約6000万円)なので十分に大きな差なのではないかと感じます。特に米国のPhDコースは日本の博士課程と異なり給料も出るので、PhD取得自体へのハードルも少しは低いのかなと感じます。

4-3. ビザ・永住権が取りやすい

最後に博士を取得をするメリットはビザ・永住権取得の観点からもメリットがあると考えられます。

研究者としてビザ・永住権を申請する場合は、より高い専門性を持っている方がUnited States Citizenship and Immigration Service (USCIS)の優先的なカテゴリーにアプライ出来る可能性が高いです。

雇用ベースの永住権(グリーンカード)(Employment-Based Immigration)の例では応募要件が厳しい順にEB1→EB2→EB3とあります。博士を持っていて高い専門性を裏打ちする業績があれば最も所要時間が短いカテゴリーのEB1での申請も可能だと考えられます。ちなみに、EB3のカテゴリーは米大学の学士相当の専門性を持った人達が応募可能といった具合です。

研究者の永住権取得までのプロセスと所要時間については、“研究者のグリーンカード(EB2 NIW)取得までの申請過程と所要時間”を参考にしてみて下さい。

 

まとめ

日本では修士卒が好まれる傾向があるのでしょうが、世界的に見れば博士卒を要件とする仕事の方が遥かに多いという現実も知っておいて損はないと思います。

人によって海外への向き不向きはもちろんあるので、日本の状況も世界の状況も両方知った上で自分と家族にとってベストな選択肢を選ぶことが出来るのが良いのではないかと感じます。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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