こんにちは、masayaです。
アメリカで仕事をするかもしれない、今アメリカでビザを取得して仕事をしているけどこのままアメリカで仕事を探すかもしれない。そういった状況でまず考え始めなければいけないのが『グリーンカード(永住権)の申請』です。
しかし実際のところ、アメリカでのグリーンカードの取得を考えている方や現在申請中の方が気にする2つのポイントが『申請過程』と『所要時間』ではないでしょうか?
私自身は2016年12月からグリーンカードの申請 (EB2 NIW) を開始して、2019年春頃に完了する見込みです。今後アメリカでのグリーンカード申請を考えている方の参考になると思ったので、今回は自身の『アメリカでのEB2 NIWでのグリーンカード申請についての過程と所要時間』のついてまとめました。
1. アメリカでのグリーンカード
アメリカでのグリーンカード (永住権) の申請には下のように幾つかのカテゴリーがあります。話をシンプルにするために今回は婚姻ベースなどの他のカテゴリーのグリーンカード申請については割愛させてもらいます。
- 米国籍の方と結婚して取得
- 永住権の抽選による取得
- 米国への投資(EB5)による取得
- 優れたスキルを有することでの取得
ポスドクなどの研究者の方は、主に4番目の『優れたスキルを有する事での取得』を目指していくことになると思います。
ポスドク・研究者がこの『優れたスキル』ベースで応募出来るグリーンカードには3つのカテゴリーがあります。要件が厳しいものから上から順番にEB1, EB2, EB3とあります。
これらのEB1, EB2, EB3でのグリーンカード取得のメリットの一つは、『申請者の家族にもグリーンカードが発効される』点です。
EB1
EB1のカテゴリーには科学、芸術、スポーツなどの分野で世界的に優れたスキルを持つ方が該当します。
科学の分野でEB1へ応募する目安としては、以下のポスドク時代の機関でのグリーンカードセミナーの数字が参考になります。
- 論文数: 10報以上
- 引用数: 100以上
- 推薦状: 5通
- 受賞歴: 世界的な受賞がある
- 国際会議のホスト経験
- 高サラリー
- 学術雑誌の豊富な査読経験
- プロフェッショナルな学会のメンバーシップ
- などなど
あくまでも上記の数字は参考で、ポイントは『どれだけ所属する科学分野へ影響を与えてきたか』です。
この辺りのGo or No goの判断は担当してくれる弁護士や所属機関の移民スペシャリストの経験や判断によって変わってくるはずです。
EB1での申請では大学や企業のスポンサーを通して申請する場合、『premium processing』という優先審理の仕組みがあるので、他のカテゴリーに比べて短期でグリーンカード取得が可能です。
EB2 NIW
多くの修士・博士を持つ研究者が応募するカテゴリーがEB2です。EB2の申請は原則労働許可証(Labor Certificate)が必要で、スポンサーとなる会社が行う必要があります。これを回避する手段として、NIW (National Interest Waiver)を同時申請すれば、スポンサーなしで個人(Self petitioner)として申請が可能になります。
EB2での申請は、申請前にスポンサーを見つける事が難しいので多くの場合は『EB2 NIW』となります。
科学の分野でEB2 NIWへ応募する目安としては、ポスドク時代の機関でのグリーンカードセミナーによると以下のようになります。
- 論文数: 5報以上
- 引用数: 20以上
- 推薦状: 5通
- 受賞歴: 学術的価値の高い受賞がある
- 学術雑誌の豊富な査読経験
- プロフェッショナルな学会のメンバーシップ
- などなど
EB1の時と同じであくまでも上記の数字は参考で、ポイントは『どれだけ所属する科学分野へ影響を与えてきたか』です。
ポスドクをはじめとした研究者は修士相当以上の学位は持っているので、多くの研究者の方の申請カテゴリーはEB1もしくはEB2 NIWになると思います。
最終的なカテゴリーの選択は、担当してくれる弁護士や所属機関の移民スペシャリストの方と相談の上決めるのが良いと思います。
EB3
EB3は専門分野においてスキルを持つ学士(大学4年卒業相当)の方が応募するカテゴリーです。
大学卒業後に企業でH1bビザ(就労ビザ)で働いている方が申請するのに最もポピュラーなカテゴリーです。
2. グリーンカード取得資格の申請(I-140)
私がグリーンカードを申請したカテゴリーはEB2 NIWでしたが、申請カテゴリー(EB1, EB2 NIW or EB3)に関わらず、グリーンカードの申請はまず『グリーンカードの取得に値する資格があるかどうか』から始まります。
この審査のために、まずはI-140という形式の書類の申請を行うことになります。
実際のI-140の申請のためには以下の書類を準備しました。
- Petition Letter (EB2 NIWが妥当である根拠を説明するための10ページ以上の書類)
- Recommendation Letter 8通
- 申請料 $580 (現在は$700)
- Form I-140 (USCISの書式)
上記の書類のうちForm I-140は当時所属していた移民スペシャリストの方に作成してもらったので、実際に自分で作ったのはPetiton letterと推薦者にサインだけしてもらう前の8通のRecomendation letter (推薦状)でした。
ちなみにEB1での申請ではU. S. Citizenship and Immigration Service (USCIS)が審査をするカレンダー日数で15日で審査の可否が下される『premium processing』というプロセスが$1,410で使用可能です。
申請書類①: Petition letter
Petition letterの中身ですが、申請者がその科学分野で大きなインパクトがあるかを伝えるための根拠・書類を提示していきます。
私のpetition letterでは以下の11個の根拠を使いました。
- Recommendation letter (推薦状) 8通
- 自身の論文リスト
- Self citationを除いた引用回数の明記されたCitation report
- 自分の論文を引用した論文が掲載された雑誌リスト
- Newsやプレスリリースなど自身の論文や業績を紹介している記事
- 学会発表リスト
- 査読依頼のメールコピー
- 学会のメンバーシップリスト
- 自身の研究分野の重要性を示す文献や記事
- 研究を遂行する上での所属機関の重要性を示す記事
- 他の研究者が自身の研究を引用した文献のハイライト
No3の『Self-Citationを除いた引用回数の明記されたCitation Report』は一見するとどうやって作成したらいいのか分からないと感じる人が多いかと思いますが、実際はすごく簡単で『Scopus』を使えば30程度で作成することが可能です。詳しくは、“Scopusの使い方、Self-Citationを除いたCitation Reportの作り方”で解説しているので併せて読んでみて下さい。
この11個の根拠の中で大体の項目の準備は、業績があれば比較的簡単です。なぜなら自分1人で準備出来るからです。
反対に、他人の協力を得ないとできない+重要+早期に取りかかるべきなのが『Recommendation letter (推薦状』です。
申請書類②: Recommendation Letter (推薦状)
Recommendation letter (推薦状)の役割は、申請者がいかにその科学分野で優れているのかを同一もしくは関連分野の第三者の方(主に研究者)に説明してもらうことです。
“研究留学、ビザ/グリーンカード、転職の推薦状: 必要になる前に知っておきたい役割と書き方“でも説明してますが、グリーンカードの審査をするU. S. Citizenship and Immigration Service (USCIS)の審査官は科学にあまり精通していない非研究者なので、申請者自身で説明するするよりも既に名声を得ている方からの推薦状の方が説得力が高いと考えられています。
また推薦状を書いてくれる推薦者も多様であるほうが好ましいです。グリーンカードセミナーで教えてもらった目安としては、
- 論文や学会発表などを通じて申請者を間接的に知っている
- 直属のボスなど直接の面識を持たない方が好ましい(共同研究相手ではない、など)
- 1-2通はアメリカ国外からが望ましい(国際的な評価が高いことを証明するため)
上記はあくまでみ目安で、絶対に守らなければいけないポイントではないことは強調しておきます。
私自身の推薦者には下の内訳のようにポスドク時の直属のボスを含んでいますし、直接の知り合いも数名いました。ただ、直接の面識のない著名な研究者の方も半分含んでいたり、大学・企業の研究者もいたりとバラエティに十分富んでいたと思います。
8通の推薦状(推薦者)の内訳
- ポスドク時の直接のボス (アメリカ人)
- ボスを通じた知り合いの大学教授(面識なし) – 4人 (全員アメリカ人)
- 共同研究相手の大学教授 (オーストリア人)
- 日本のPhD時代のメンター (日本人)
- ポスドク時代の知人で製薬会社の研究職 (アメリカ人)
実はこの『推薦状にサインして返してもらう』というステップが最も時間がかかるので、グリーンカード申請を始める時に真っ先に取りかかるべきだと思います。
というのも、推薦状をお願いする方々は極めて多忙であることが多く、中々問い合わせをしても連絡が返ってこないことが多々あります。
実際今回8人の方に推薦状をお願いしましたが、
- 翌日に返してくれた方が3人
- 1週間以内に返してくれた方が3人
- 催促の連絡をして2週間後に返してくれた方が1人
- 催促の連絡を2回(1回目は自分、2回目は直属のボス)して1ヶ月後に返してくれた方が1人
でした。
このため、推薦状の準備はグリーンカードの申請を考えたら真っ先に取り掛かることをお勧めします。
I-140 (EB2 NIW)の所要時間
EB2 NIWカテゴリーでのI-140の申請から承認までの一連のタイムフローは以下のような感じでした。
2016年10月: Recommendation Letter (推薦状)を書いてくれる方への連絡
2016年11月: Recommendation letterの作成とpetition letterの作成
2016年12月上旬: USCISがI-140の審査を開始
2017年8月上旬: USCISから追加書類の要請 (Request For Evidence: RFE)
2017年8月中旬: 追加書類の提出(RFEへ返答)
2017年9月中旬: I-140の承認
最初のI-140の審査開始から追加書類の提出も含めて承認までの所要時間は『約10ヶ月』でした。
推薦状の準備も含めると『約12ヶ月』です。
これが早いのか遅いのかは定かではないですが、1人の研究者(申請時ポスドク)の例として参考にしてもらえれば幸いです。
3. 実際のグリーンカード取得申請(I-485)
I-140の申請が承認されて『グリーンカードへ申請していいよ』という状態になれば、次は実際のグリーンカードの取得申請(I-485)を行います。
このI-485の申請と同時に、
- I-765 (Employment Authorization Document: EAD)
- I-131 (Advances parole)
という2つの書類も申請しました。
申請費用はI-485が$1225、I-765が$495、I-131が$575ですが、I-485を申請しI-765とI-131を同時申請していれば、I-765とI-131の費用は免除されるようです。
通常はI-485, I-765, I-131の3つを同時に家族分申請するので、申請費用は[$1225 x 家族の人数分] 必要になります。
この申請料金は時々変更になることもあるので、最新の情報は“USCISのHP”で確認して下さい。
I-485申請に関わる1番の注意点は、I-485の審査が始まると『原則アメリカ国外へは出ることは出来ないの』で、日本への一時帰国などの用事はI-485審査開始前までに済ませておくことをお勧めします。
I-765: Employement Authorization Document (EAD)
EADは車の仮免みたいなもので、I-485申請中に永住権を持たない外国人が法的にアメリカで働くことを許可を与えてくれます。正式にグリーンカードが届くまでに繋ぎのようなものです。
以前は約3ヶ月で届いていたようですが、2018年の段階では3-6ヶ月かかると弁護士から教えていただきました。
EADは更新も可能なので、万が一I-485の承認が遅れてグリーンカードが手元に届くのに時間がかかりそうな時でも安心です。
I-131: Advances parole
I-131 (Advanced Parole)はグリーンカードが手元に届くまでの間 (I-485申請中の間)、その申請状態を維持したままアメリカへの再入国を許可を申請する書類になります。
このI-131を申請しておくことで、EADカードが手元に届いた後からグリーンカードが手元に届くまでの間アメリカ国外への出入国が可能になります。
I-485の申請書類
I-140の時とは異なり、I-485の申請に必要な書類はさほど難しいものはありませんでした。婚姻関係の証明のための戸籍の準備に関しては、少し早めから戸籍の取り寄せを日本に滞在しているご家族にお願いしておくとスムーズに書類準備ができるので良いと思われます。
- パスポートサイズの写真6枚
- 翻訳付きの戸籍抄本(婚姻証明用)
- これまで受け取った全てのI-797 approval notice (I-140, J1ビザ, H1bビザ, O1ビザ)のコピー
- 全てのDS2019 (Jビザ時の滞在許可書類)のコピー
- 前回入国時のI-94のコピー
- 健康診断の結果 (I-485申請開始した後)
上記の書類を揃えて、弁護士サイドを通じてUSCISへと郵送しました。
I-485の所要時間
幸いなことにI-485の申請は会社からのサポートを受けることができたので、サポートが受けられる時期まで待ってから、I-140承認から約9ヶ月待ってから、I-485の準備を開始しました。
2018年5月下旬: 書類集め開始
2018年7月上旬: I-485申請開始
2018年11月上旬: USCISの最寄りのオフィスでのBiometrics(指紋採取)
2019年4月中旬: 面接
2019年5月頃: グリーンカード取得
まだI-485の承認までは完全には終わっていないですが、同じくI-485を申請中の同僚(EB1)からの情報を参考にすると、彼はBiometircsの6ヶ月後に面接を行っていたので、来年の春くらいにはグリーンカードの取得が完了する見込みです。
I-485取得までの申請から承認(見込み)までの所要時間は『約10ヶ月』になると思われます。
書類集めの期間を含めると『約12ヶ月』といった感じになります。
追記:実際の面接の体験談
2019年4月中旬にグリーンカードの面接を最寄りのUSCISの審査官のいるオフィスで受けてきました。実際の面接の雰囲気や受けた質問などは、“雇用ベースのグリーンカード(I-140EB2/I-485)のインタビューの体験談”に詳しくに記載してるので、そちらを参考にして下さい。
4. グリーンカード取得までの所要時間と費用
グリーンカード取得までのトータルの所要時間ですが、I-140の申請から承認までが10ヶ月(準備期間込みで12ヶ月)、I-485の申請から承認(見込み)までが約10ヶ月(準備期間込みで12ヶ月)で、合計で『20-24ヶ月』ほどかかるようです。
私のケースでは行いませんでしたが、I-140とI-485の同時申請も可能とのことです。詳しくは、所属機関の移民スペシャリストの方に質問してくださいね。
I-140, I-485の申請に要した費用について
第1段階のI-140 (EB2 NIW)は自分での申請(self petition)だったので、弁護士費用はかかっておらず申請料$580 (現在は$700必要)でした。
第2段階の申請時はI-140申請時の時とは所属が変わり今の会社になったので、申請料(2人分)$2450はカバーして頂きました。
なので実際のグリーンカード取得までの負担は幸いなことに$580でした。
因みに、“usavisanow.com”によると弁護士費用は、グリーンカードを申請するカテゴリーや状況によって異なりますが、$4000-6000が目安といった感じだと思われます。
仮に申請料・弁護士費用の全てが自腹になっていた場合は、家族2人分の申請で約$8000ほど必要だったことになります。
✔︎ 費用節約のポイント
第1段階のI-140を申請した時に所属していた研究機関では、スタッフ以上(ポスドクは除く)が申請する際は一定条件に合意すれば申請料や弁護士費用を負担してくれる仕組みがあったので、グリーンカードを申請する際は所属機関にグリーンカード申請に関する費用のサポートがあるかどうかを確認してみることをお勧めします。
まとめ
- 第1段階のI-140の申請は、推薦状集めみ時間と労力がかかるので早期に取り組む (所要時間: 約10ヶ月)
- 第2段階のI-485の申請では以前より審査に時間がかかっているが、さほど準備は難しくない (所要時間: 約10ヶ月)
- 申請費用・弁護士費用合わせて$5000以上はかかるが、所属機関からのサポートがある場合は利用して節約する
グリーンカード(永住権)はアメリカで働こうと思う方には避けては通れないステップです。それなりの費用がかかってしまいますが、そこは『未来への投資・自分への投資』だとポジティブに考えるのが良いです。
研究者によるグリーンカード(EB2 NIW)の申請のイメージが少しでも伝わってくれたら嬉しいです。
実際の面接の様子や質問などについては、“雇用ベースのグリーンカード(I-140EB2/I-485)のインタビューの体験談”を併せて読んでみて下さい。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
参考になった、面白かったと思っていただけたら是非シェアしてください 🙂