Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunity

ポスドクの研究室でビッグラボを選ぶ5つのメリット・3つのデメリット

こんにちは、masayaです。

ポスドク、大学院の研究留学で後悔しないための研究室の選び方で紹介したように、博士課程修了後にポスドク先を探す時に所謂『ビッグラボ』へ行くという選択肢と少数の人員で運営する研究室へ行くという選択肢の大きく分けて2つあります。

私自身は前者のビッグラボでポスドクのトレーニングを行ったので、少数のラボの事は詳しくは分かりませんが、ビッグラボでポスドクをして感じた『ビッグラボのメリット・デメリット』についてまとめました。

研究室選びでビッグラボを考える際の参考になると幸いです。

1. ビッグラボの5つのメリット

1-1. 潤沢な研究費

きっと一番先に考えつくであろうメリットは潤沢な研究費ではないでしょうか?

確かに他の研究室に比べると研究費が充実している点は大きなアドバンテージだったと感じますし、時間がかかる試料調製などはお金で解決できるなら解決して、その分でできた時間はもっと生産的な仕事に使おうという環境が整っていました。

だからといって何でもかんでもお金をかけて買い整えるといったわけではなく、古くても使える機器はずっと使われていましたし、自作の方が信頼できる試薬などは自作するなどしていたのでコスト-パフォーマンスの意識は高かったです。(少なくとも私が所属していた研究室では)

作業効率を上げるために研究費を投資するといったイメージが一番近いかもしれません。

研究費が多くあるということは、PhDの学生・ポスドク・スタッフサイエンティスト・ラボマネージャーなどの研究室を効率良くかつ生産的の動かせるだけの多くの人員を確保できるということでもあります。

これはそのまま以下の2つ目のメリットに繋がります。

1-2. 優秀なラボメイト達

多くの人員を確保できるということは採用枠がたくさんあるということです。インパクトのある論文を数多く出している研究室のは世界中から多くの応募があり、中にはとても優秀な方が大勢います。(もちろんそうではないこともありますが…)

そういった優秀なラボメイト(同僚)達と一緒に研究生活を送ることは様々な有益な情報を吸収する機会です。

①ディスカッション

日々のディスカッションやちょっとした立ち話をしたりするだけでも、案外ラボメイトからいいアイデアをもらったり、インスパイアされたりすることがあります。

研究室の研究員の人数が多いと、異なるバックグラウンドを持った研究員が集まっている(多様性の一つ: Diversity)ので、行き詰まっていたプロジェットやデータの解釈などでも、自分とは異なった視点でアドバイスをもらったりできるのも大きなメリットです。

新しい実験技術の習得

そういった多様な研究バックグラウンドを持った優秀な研究員が大勢いると、彼/彼女達から新しい実験技術を習ったりすることも出来ます。実際に習得はしなくとも、少なくともそういった技術があるということは知ることができます。

一例としては、ポスドク時代の研究室にEnzymologyに強い同僚がいたので、酵素反応速度論(kinetics)のついて実験を指導してもらいました。

プレゼンテーション

またプレゼンテーションに関しても、研究室の人数が多いので色々なスタイルのプレゼンテーションを見ることができるので勉強になります。中にはズバ抜けてプレゼンが上手い人はきっといると思うので、是非プレゼンの技術を学んでもらいたいです。

またビッグラボでは研究員の出入りも多いので、ポスドクの採用に関するインタビューで研究プレゼンを聞くことも多いと思います。そういった機会でちょっと分野が異なる研究分野にも触れられるのメリットかもしれません。

私の所属していた研究室では、プレゼンテーションに関してはボスがとても厳しかったので、プレゼンテーションに関する様々なポイントを指導されました。ポスドク時代のプレゼンに関する教えの数々は、英語が苦手だからこそ上達させたいプレゼンテーションの構成とポイントでまとめてあるので、興味のある方は是非読んでみて下さい。

フェローシップ

私が所属していた研究室では1年目、2年目のポスドクに対してボスが積極的にフェローシップの獲得を推奨していました。そういった環境下では自然と周囲のほとんどの同僚もフェローシップ獲得経験を持っています。

日本の大学院の研究室レベルで、特定の研究室が毎年のように日本学術振興会の特別研究員の採択者を輩出していることからも分かるように、申請書作成のノウハウの蓄積や申請書の成功サンプルはかなり貴重です。

フェローシップ獲得者を多く抱えているビッグラボでは、同僚達からフェローシップ作成のアドバイスをもらったりと、様々な有益な情報を吸収する機会に恵まれていると思います。

またフェローシップの申請書作成においては、ボスが過去に作成したグラントの申請書も大いに参考になります。ビッグラボを運営して大きな予算を獲得したり、リニューアルにも成功しているようなボスのグラントの申請書は正直かなりレベルが高いはずです。見せてもらえるかどうかはボスの方針にもよると思いますが、実際にボスにお願いして見せてもらえる機会があれば、『Grant Writing』という観点からもとても役に立ちます。

日本国籍を持ったポスドクが応募できるフェローシップのリストは、日本人ポスドクが応募可能なフェローシップ・研究助成の網羅的リストでまとめてあるので合わせて読んでみてください。

1-3. 難しいOpen Questionへの挑戦出来る環境

大きな研究室では、研究分野の先端を走っていることが多いと考えられ、その当該研究分野におけるまだ誰も知らない未知の課題、『難しいOpen Question (テーマ)』へ挑戦できる環境が整っているのもサイエンス的に大きな魅力だと感じます。

大きな研究室を運営するようなボスは1つの研究分野を切り開いた人物、もしくは常に先頭を走ってきている人物である可能性が高いです。そういった人物が疑問に考えているテーマは、当該研究分野に共通するOpen Questions、難しい課題であることにほぼ等しいです。

ポスドクのテーマは(特に入りたての初期の頃は)ボスから与えられることが多いと考えられるので、そういった研究分野共通の課題・難題もしくは少なくともそれに近い課題へ取り組ませてもらえる可能性は十分にあると考えられます。

そういった難しい課題へ挑戦して得られる経験値は以後の研究者人生を支える経験にもなるので、ビッグラボを選択する大きなメリットの一つだと思います。

1-4. 良いジャーナルへの論文の期待度が少し高い

上述の研究分野での共通認識のような難しい課題をテーマとして取り組んでいくということは、データがまとまった時に自然とハイインパクトジャーナルへ投稿できる確率も高いはずです。

もちろんインパクトファクターの高低で論文の質が良いか悪いか決まるわけではないのは承知していますが、ポスドク後のアカデミアポジションや企業の研究職のオープンポジションを獲得する上では、有利に働くのは否定できません。

また、『論文を投稿→リジェクト→再投稿→リジェクト』の流れを何度も繰り返していると、無視できない量の時間を浪費してしまいます。作成した論文の質をしっかりと把握して一回でアクセプトまで持っていけるジャーナルを最初に選択できていれば、リジェクト→再投稿の流れで失う時間が節約できてその時間をしっかりとサイエンスに使うことが出来るはずです。

ビッグラボのボスにもなると所謂NCSやその姉妹誌への投稿・アクセプトの経験が半端なく蓄積されているので、どの程度のデータや結論に達していれば良質なジャーナルへ投稿できるのかといった判断がとても上手い印象を受けました。

1-5. アカデミア・企業への強力なネットワーク(コネとも呼ぶ)

コネ就職するために活用すべきネットワークの知識と作り方でもまとめていますが、アカデミアの独立PIのポジションや製薬企業をはじめとした企業の研究職のオープンポジションへの就職活動では『ネットワーク(コネ)の強さ』がとても重要な要因として働きます。

研究室にもよりますが、ビッグラボでトレーニングを積んだポスドク達の多くは(もちろん全員ではない)大学のAssistant Professorや企業のScientistやSenior Scientistとしてキャリアを前進させています。この卒業生に当たる先輩達がアカデミアや企業で活躍していくと、出身研究室のトレーニングは良質なものであることが周囲へ浸透していくので、後輩にあたるポスドク達が就職活動へアプライして来た時も自然と高評価を得やすくなると考えられます。少なくとも名の知れた研究室出身の候補者は目にはとまります。

また、ジョブがオープンになった段階で『誰か良い候補者はいないか?』とビッグラボのボスにお伺いに連絡が送られてくることもザラにあります。

研究室で成果がまとまり、いざ就職しようとする段階に来た時にタイムリーにオープンジョブの情報を入手出来る事は非常に大きなアドバンテージになります。“アメリカ製薬研究職への就活活動 No.3: 求人検索と応募のポイント”でも少し触れていますが、ジョブがポストされた日付はとても大切です。遅く応募すれば採用側の1回目の選考会議に乗っかれない可能性が高くなることが予想できるので、やはりオープンジョブの情報はタイムリーに把握することは大切です。

 

2. ビッグラボの3つのデメリット

2-1. 厳しい競争環境

研究分野内で常に一歩先を行っている可能性もありますが、世界的に争っている可能性も十分に高いので常に競合先のグループを意識したりして精神的にとてもプレッシャーを感じます。

また、いつ競合相手のグループから同じような結論や先を行くような内容の論文が出るかも知れないので、出来るだけ早く成果をまとめて論文投稿しなければならないという常に時間に追われているプレッシャーも存在していました。このあたりは研究分野における研究室の立ち位置やボスの方針にもよって変わってくるとは思います。

2-2. 適応力が問われる

ビッグラボを選んだからといって、残念ながら全員がそういった競争環境に適応出来るかと言うとそうではなく、厳しい競争環境へ適応できない人はドロップアウトしていくことになります。以前所属していた研究室でも入って1年以内に他の可能性を求めて研究室を去っていったメンバーを何人か見てきました。

やはり厳しい競争環境下でのストレスを上手く受けきれなかったり、ボスとの方針に適応出来なかったりしたようでした。

この中には英語圏の人も含まれるので、適応していく力には英語力はそんなに必要ないんじゃないかと感じます(もちろん英語はできた方が楽ですが)。

私たち日本人は非英語圏出身なので、英語圏の文化・環境への適応もしなくてはいけないので、より一層大変かもしれません。

2-3. 良くも悪くもラボを出た後も常にボスの影響力が及ぶ

ビッグラボのメリットの一つである『アカデミアと企業への強力なネットワーク(コネ)』は就職活動においてはとても強力な支援になりますが、表裏一体として今後キャリアを進んでいくにあたりずっとボスの影響を大なり小なり受けていくことになります。

例えば、元ボスの興味のある対象と自分が興味のある対象が被ってしまったりした時は、協同研究にするなり何かしらの調整をしないといけないかもしれないですし、最悪手を引かないといけないかもしれません。

また研究室を出た後についたポジションで数年働いた後、次のポジションを探す時にも元ボスにReferenceをお願いすることになってくるでしょうから、そこでも元ボスの影響は及んでくると考えられます。

なので、上手に生き残っていくために大切な事は『研究室を出た後も元ボスと良好な関係を築いておく事』だと思います。

 

まとめ

個人的にはビッグラボで過ごしたポスドク期間の約5年間はなかなか苦しい期間でしたが、今の自分を形成する上で良質かつ濃密なトレーニングでもありました。(…もう勘弁ですが…)

Natureに掲載されていた“Postdocs: Big lab, small lab?”もビッグラボと少人数のラボを考える際の参考になるので、是非読んでみて下さい。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

参考になった、面白かったと思っていただけたら是非シェアして下さい 🙂

TOPページへ戻る